第89章 彼は彼女だけを信じる

電話は長いこと鳴り続け、ようやく繋がった向こうから、雍容さの奥に苛立ちを隠しきれない女の声が落ちてきた。

「……まだ私に電話してくるつもり? 言ったでしょう、用もないのに連絡しないで」

庄司大奥さんは声をぐっと低く抑えていた。そこに滲むのは、後ろ暗さゆえの警戒心。

「は。母さん、そんなに突き放すなよ。今の俺たちは運命共同体だろ」

「誰が運命共同体よ!」庄司大奥さんは即座に噛みついた。「庄司泉、いい? 景悠に手を出すんじゃないわよ。変な真似をしたら、真っ先に私が許さない!」

「へえ。母子愛ってやつ?」庄司泉はのんびりと言い、嘲りを隠そうともしない。「残念だけどさ、母さんの可愛い息子は...

ログインして続きを読む