第9章 伊代妃奈は彼女よりも母親らしい

伊代妃奈の手が、ぴたりと止まった。

「新谷嬢。私の専門性を、役者風情に品定めされる筋合いはない」

新谷木雪の笑みが、顔に貼りついたまま固まる。

「……な、何ですって?!」

「言ったでしょう」

伊代妃奈は手にはめていた使い捨て手袋を乱暴に引き抜き、医療廃棄物のボックスへ放り込んだ。

「病を診て命を救うのは、私の職業倫理。じゃなければ――庄司奥さんみたいに、骨の髄まで腐りきった人間なんて、一秒でも視界に入れたくない。目が汚れる」

「あなたっ!」庄司奥さんは怒りで身体を起こしかけ、顔を歪めた。

伊代妃奈は彼女を一度も見ない。青ざめたり赤くなったりする新谷木雪だけを、氷みたいな目で射...

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