第90章 眠りにつくまでずっとそばにいてくれ

治療は月初に組まれた。

手術というより、極めて複雑な標的注射治療。場所は仁心病院の最上級特別病室だ。

伊代妃奈は無菌ガウンに着替え、準備を整える。淡い金色の薬剤が入ったシリンジを手に、ベッド脇へ歩み寄った――その瞬間。

庄司景悠の、さっきまで穏やかだった顔色が、ふっと固まった。

「どうしたの? 緊張してる?」

庄司景悠は喉仏を小さく上下させ、顔を背ける。声は不自然なくらい張りつめていた。

「……痛いの、怖い」

伊代妃奈「……」

シリンジを持つ手が宙で止まる。聞き間違いかと思った。

引き結ばれた顎のライン。『冗談じゃない、真面目だ』とでも言いたげな表情。

――はいはい、わか...

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