第18章 狂っているんだろう

オフィスの中で、前谷明梨は重久瑛介の膝に腰掛けていた。

池川里緒がドアを押し開けた瞬間、明梨の手はまだ瑛介の肩に置かれたまま。顎を上げ、今にも唇に口づけようとしているところだった。

扉の開く音に、二人の動きがぴたりと止まる。

先に我に返ったのは前谷明梨だった。彼女は素早く瑛介の膝から降りると、髪をさっと整え、里緒のほうへ二歩ほど寄ってくる。顔には、罪の欠片もない無垢な表情。

「義姉さん、誤解しないで。さっき、私うっかり転んじゃって……瑛介兄さんが、ケガしてないか見てくれてただけなの」

矢川七海は呆然としていたが、数秒遅れて正気に戻るなり、堪えきれず怒鳴った。

「こっちは目ぇついて...

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