7年無視され続けた冷遇妻、離婚してトップデザイナーとして輝きます

7年無視され続けた冷遇妻、離婚してトップデザイナーとして輝きます

星埜雪奈 · 連載中 · 390.9k 文字

632
トレンド
11.6k
閲覧数
390
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

7年間、私は家庭という暗闇の中で、ただの「便利な妻」そして「母親」として存在を消されて生きてきた。

度重なる無視と冷遇の果てに、私はついに自ら離婚協議書を突きつけた。

――エプロンを脱ぎ捨てた私は、かつて封印した己の才能を呼び覚まし、世界が称賛するトップデザイナーとして眩い光の中に返り咲く。

失って初めて、自分が何を手放したのかに気づいた大富豪の夫。
彼はプライドを破り捨て、泣きながら私に「戻ってきてくれ」と膝を折った。

だが――もう遅い。
あなたの届かない場所で、私はすでに新しい人生を歩み始めているのだから。

チャプター 1

「ママなんて大っ嫌い! 運動会に来ないで!」

 池川里緒は少し離れた場所に立ち尽くし、夫の重久瑛介にしがみついて泣きわめく息子を見つめていた。胸の奥が、ぎゅっと痛む。

 昨夜、息子は「迎えに来ないで。家にいて」と言った。学校で何か嫌な思いをしているのに、言い出せないのではないか――そう思って、里緒は朝早くから園に来たのだ。

 けれど、着いてすぐ目に入ったのは、幼稚園の運動会だった。

 息子の重久綾斗は、若くて綺麗な女の手をぎゅっと掴んで離そうとしない。

「ママの服、ダサいんだもん! 来るたび恥ずかしい! それよりおばさんのほうがいい! きれいで優しいし! 運動会はおばさんと出る!」

 池川里緒は綾斗の隣にいる女をじっと見た。やわらかな物腰、隙のない化粧、上品な佇まい。対して自分は、地味で飾り気のない服装。

 目の奥がすうっと冷えていく。

 かつての彼女もまた、社交界でひときわ目を引く令嬢だった。デザインの才にも恵まれ、将来は明るかった。

 だが、結婚してからすべてが変わった。息子は身体が弱く、病院通いが絶えない。夫は仕事に追われ、家にいる時間も少ない。結局、里緒は夢も仕事も手放して家庭に入った。

 それなのに。

 心を砕いて尽くし続けた末に返ってきたのは、息子の露骨な嫌悪だった。

 池川里緒は思わず重久瑛介を見た。夫なら、ひと言くらいは庇ってくれると思ったのに。

 三十を過ぎても、瑛介は相変わらず人目を引く男だった。彫りの深い目元、すっと通った鼻筋。雑踏の中でもひときわ目立つ顔立ち。

 七年前、初めて会ったときも、この顔に心を奪われた。

 彼のためにすべてを捨て、喜んで専業主婦になった。

 けれど、彼女を守る言葉はついに来なかった。

 重久瑛介は息子を咎めるどころか、隣の女の肩を軽く抱いてから、いかにも面倒そうに里緒の前まで歩いてくる。

「先に帰れ。綾斗が今日は珍しく楽しそうなんだ。水を差すな」

 そのとき、女も微笑みながら近づいてきた。

「あなたが義姉さんですよね? 前谷明梨です。ずっとF国で勉強していて、最近帰ってきたんです」

 池川里緒はわずかに眉を寄せた。そこでようやく思い出す。

 重久瑛介には養妹がいた。母親の親友の娘で、両親を亡くしたあと重久家に引き取られた子――前谷明梨。

 やがて二人の仲が露見し、重久家は受け入れきれず、無理やり引き離して明梨を海外留学に出した。以来、音信不通になっていたはずだった。

 息子はまだ泣きわめいている。前谷明梨は里緒をちらりと見て、笑みを浮かべたまま言った。

「子どもって、そういうものですから。義姉さん、気にしないでください。私がうまく言って聞かせます」

 ――自分の息子を、よその女が言い聞かせる。

 あまりに皮肉で、笑うことすらできなかった。

 池川里緒は顔をこわばらせる。

「結構です、前谷さん。私の息子のことは、私がちゃんと教えます」

 前谷明梨は一瞬だけ目を丸くし、次の瞬間には困ったように重久瑛介の袖を引いた。

「瑛介兄さん……義姉さん、私に怒ってるのかも。やっぱり、私が先に帰ったほうが――」

 すると重久綾斗がすぐさま駆け寄って、前谷明梨の脚にしがみつき、その勢いのまま池川里緒をどんと突き飛ばした。

「おばさん、行かないで! ママが帰って!」

 池川里緒はよろめき、そのまま床に尻もちをついた。硬い感触が骨まで響いて、ずきりと痛む。

 重久瑛介は手を差し伸べようともしない。むしろ見下ろすようにして責めた。

「どういうつもりだ? 明梨が好意でお前の代わりに運動会へ出てやろうとしてるのに、その態度か」

 池川里緒は痛みをこらえながら立ち上がった。声が震える。

「私は代わってほしいなんて頼んでない。それに、そもそも誰も私に知らせてくれなかったじゃない」

「つまり、俺たちが悪いって言いたいのか?」

 重久瑛介の声が、すっと冷える。

「まず自分を省みろ。なぜ綾斗が明梨を選ぶのか、なぜお前を嫌がるのか。母親としてやるべきことを本当にやってきたのか?」

 夫は他の女を庇い、妻を責める。

 池川里緒は乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 この家のために、彼女はすべてを捧げてきた。それなのに感謝どころか、「母親失格」と責め立てられる。

 これ以上の皮肉があるだろうか。

「義姉さん、やっぱり先に帰ったほうがいいと思います」

 前谷明梨が、やわらかな声に棘を混ぜて言う。

「そのままだと、綾斗がかわいそうですし。恥ずかしいでしょう?」

 池川里緒の心は、音を立てて冷え切った。

 綾斗の母親は自分のはずなのに。今や、息子に恥をかかせる元凶扱いだ。

 思えば数週間前から、息子は「優しくて綺麗なおばさんがよく遊んでくれる」と口にしていた。夫が前谷明梨の名を出すときも、目元はどこか柔らかかった。

 気づけなかった自分が愚かだった。母親の居場所は、もうとっくに別の女に奪われていたのだ。

「……分かった。帰るわ」

 池川里緒は絶望のまま俯き、背を向けた。

 その背中に、息子の弾んだ声が突き刺さる。

「やった! ママ、やっと帰った! おばさんと一緒に運動会に出られる!」

 鼻の奥がつんと痛み、視界が滲んだ。

 里緒は職員室へ向かい、教師にひと言挨拶をした。教師は申し訳なさそうに頭を下げる。

「すみません、重久さん。綾斗くんが叔母さまを呼んでいたなんて……こちらから先にお伝えするべきでした」

 池川里緒の視線は、教師の背後に貼られた運動会のポスターへ吸い寄せられた。大きく書かれていた文言。

 ――保護者参加。お父さんとお母さん、必ず一緒に。

 胸が鈍器で殴られたように痛んだ。じわじわと、細かい痛みが全身に広がっていく。

「先生、気にしないでください」

 池川里緒は力なく首を振る。

「これから綾斗のことで、私にお電話をくださらなくて結構です」

 息子が母親として認めたくないのなら――望み通りにしてやろう。

 幼稚園の門を出たとき、背後から大きな歓声が上がった。

 振り返ると、重久綾斗が表彰台の上でメダルを高く掲げている。左右には前谷明梨と重久瑛介。二人は同時に、綾斗の幼い頬へちゅっと口づけた。

 あたたかくて、幸せそうで。

 まるで――あの三人こそ、本当の家族みたいだった。

 池川里緒はこらえきれず、涙を頬に伝わせた。

 どうやって重久家へ戻ったのか、自分でもよく覚えていない。クローゼットを開け、奥からスーツケースを引っ張り出す。

 恋人だった頃、重久家は上流階級の中では池川家に及ばず、両親も瑛介を快く思っていなかった。けれど里緒は耳を貸さなかった。意地でも彼と結婚すると決めていた。

 結婚後は実家の人脈も資金も惜しみなく注ぎ込み、重久グループを目立たない小企業から上場企業へと押し上げた。

 始まりから終わりまで、池川里緒はずっと重久瑛介の背中を支える女だった。

 努力すれば、この家は幸せになれる。そう信じていた。

 ――今となっては、笑い話だ。

 クローゼットに並ぶのは夫と息子の服ばかり。自分の服は数えるほどしかない。その事実が、ひどくもの悲しかった。

 荷造りを終え、離婚届を一通、化粧台の上に置く。そして玄関へ向かった。

 階段に差しかかったところで、息子のはしゃいだ声が聞こえてくる。

「おばさんが一番! フライドチキン食べさせてくれるし、おもちゃも買ってくれる! ママなんて、まずい野菜ばっかり食べさせるんだもん!」

 綾斗はまだ成長期だ。だからこそ、ジャンクフードばかり食べさせたくなかった。毎日工夫して野菜を食べさせてきたというのに、それすら不満に変わる。

 池川里緒が階下を見下ろすと、重久綾斗は前谷明梨の手を握り、三日月みたいに目を細めて笑っていた。

「おばさん……誰もいないときだけ、ママって呼んでもいい?」

最新チャプター

おすすめ 😍

トップ暗殺者、学園に転生する

トップ暗殺者、学園に転生する

6.7k 閲覧数 · 連載中 · ミサキ
太平洋の孤島に響き渡る爆発音の中、私は敵と刺し違えることで、すべてに終止符を打った。
そして、目が覚めた。

16歳。肥満体型。顔中に広がったニキビ。冷え切った体育倉庫の片隅で、私は丸まっていた。
周囲から16年間ずっと忌み嫌われてきたこの肉体の中で、私はわずか3秒で状況を理解した――。

「死体への憑依、つまり――転生だ」

元の肉体の持ち主は、誰もが容赦なく踏みにじる、お人好しの「いじめられっ子」だった。
継母は慢性的な毒物で彼女の身体を破壊し、実の妹は彼女を裏切って罠に嵌め、クラスメイトは彼女を暗闇に閉じ込めて冷水を浴びせ、教師さえも一緒になって彼女を踏みつけにする。

だが、あいにく。
今この身体の中にいるのは、暗殺組織のトップだ。
地獄の底から這い上がってきた、一人の女だ。

私はまず、元の持ち主が昨夜味わった屈辱のツケをきっちりと払わせ、皮膚に残る毒素を洗い流した。
物理のテストでは満点をもぎ取り、超一流の弁護士を1分1秒の狂いもなく現場へ急行させて私の弁護に当たらせ、果ては市長自らに我が家の門を叩かせ、私の後ろ盾にならせた。

今世において、私に借りのある全ての奴らから、一筆一筆、その代償を血で購わせてやる。
本物の令嬢は、もう誰にも媚びない ~裏切られた私の、二度目の人生

本物の令嬢は、もう誰にも媚びない ~裏切られた私の、二度目の人生

9.1k 閲覧数 · 連載中 · 神楽
前世の私は、有岡家で最も虐げられた「落ちこぼれお嬢様」だった。
執事の娘・西川安菜を哀れんで手を差し伸べた結果は、地獄。
兄たちの愛を奪われ、文字通り血を吸い尽くされ、体重は40キロを切った。
追い詰められた私は、絶望のまま窓から身を投げた。
死に際の一言は……「で? これから安菜の輸血はどうするの?」という皮肉。
……のはずだったのに。
目を覚ますと、私は三年前——安菜が泣きつかれてきた「あの日」に戻っていた。
可哀想なフリをする彼女を見つめ、私は笑った。
もう二度と、優しさなんて見せない。媚びもしない。
“親切”に立ち振る舞い、彼女を使用人部屋へ追いやって自立させてあげることにした。
彼女ばかり庇うお兄様たちの機嫌取りも、もう終わりだ。
かつて尽くしまくった元婚約者・石野星紀なんて、視界に入れる価値すらない。
勘違いしないで。
今の私は、ただの「有岡家のお嬢様」じゃないんだから——。
舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

50.3k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
18年間、自分が実の娘でないとは知らずに生きてきた。ある日、荷物をすべて玄関の外に放り出され、街角に立ち尽くす私の前に現れたのは、噂では極貧だという「生家」から迎えに来た、見たこともない「兄」。

ところが、その兄が乗ってきたのはトラクターだった。

ガタガタと揺れるトラクターがたどり着いた先は、まるで古城のような大邸宅。そこで私は思い知る。本当の家族のもとに引き取られた私は、貧しくなるどころか、前よりずっと裕福になっていたのだ。

……だが、ちょっと待ってほしい。なぜ私には突然、婚約者というものが存在するのか。しかもその相手は、私の大学の教授だという。誰か、説明してくれないだろうか。
転生して絶縁したら、元家族は破滅に

転生して絶縁したら、元家族は破滅に

32.5k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
名門古川家の生まれの娘・古川朱那は、前世、父・古川邦夫と三人の兄(礼和、礼希、礼人)が養妹・周防天華を無条件に贔屓し、天華の陰険な陥れに遭い、理不尽に死んだ。
22 歳、天華に陥れられた日に生まれ変わった朱那は、過去の卑屈さを捨て、天華の悪事を暴き、偏心な家族に毅然と立ち向かう。芸能界で演技の才能を開花させ、自らの人生を切り開くため、全力で逆襲する。
地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

6.3k 閲覧数 · 連載中 · 三日月プリン
「救うのは妹の方だ。お前は強いから、生き残れるだろう」
十八年間、空気のように扱われ、誘拐事件の際にも迷わず切り捨てられた私。
「強さ」という名の言い訳で死の淵に追いやられた私は、地獄の果てで生き延びた。
そして今、全国民が見守る超人気リアリティショーの舞台に、私は「かつての復讐者」として舞い戻る。
家族が偽りの善人面を振りまく中、彼らの仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていく最高のショウタイム。
そんな私を面白がり、盤面をひっくり返す男がいた。冷徹なるF1チャンピオン。彼だけは、私の冷酷な正義を肯定し、その権力で私を囲い込む。
さあ、復讐劇の始まりよ。私を「可哀想な犠牲者」だと思っていた報い、その身に刻ませてあげる。
未熟

未熟

6.1k 閲覧数 · 連載中 · ほしの なお
結婚3周年の日、見知らぬ相手からのメッセージが私の命を救い、同時に完璧だった結婚生活を木端微塵に砕いた。夫は親友と不倫し、義母は犯罪組織を牛耳る黒幕だった。
嘘の巣窟に囚われた私は、冷徹で権力を持つ弁護士にすがり、復讐を誓う。妊娠の偽装、証拠集め――奴らをすべて破滅させてやる。
だが、私を導く謎の「見知らぬ人」はいったい誰なのか? そして、その弁護士が本当に求めているものとは――?
令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

810.2k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
天才陰陽師だった御影星奈は、かつて恋愛脳のどん底に落ち、愛する男のために七年もの間、辱めに耐え続けてきた。しかしついに、ある日はっと我に返る。
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!
追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

142.1k 閲覧数 · 連載中 · あざ鳥
「お前みたいな偽物の令嬢、さっさと山奥に帰れ!」

孤児だと判明した途端、彼女は養父母から冷酷に家を追い出され、婚約者も本物の令嬢へと乗り換えた。
彼らは、彼女がこれからド田舎で悲惨な生活を送るのだとあざ笑っていた。

しかし、彼女を迎えに来た実の家族は、なんと世界を牛耳る超巨大財閥の一族だった!
さらに、彼女自身もただの小娘ではない。その正体は、世界の医学界が平伏す伝説の天才医師だったのだ。

実家に戻るや否や、彼女は神業のようなメス捌きで次々と難病患者を救い、医療界の権威たちを圧倒していく。その圧倒的な実力に、誰もが恐れる冷酷なトップ御曹司でさえも彼女に惹かれ、無限額のブラックカードを差し出す始末。

一方、彼女を追い出した養父母の家業は倒産寸前に陥り、元婚約者も彼女の本当の姿を知って絶望の淵に立たされていた。
彼らが泣きついて許しを乞うても、彼女は冷たく言い放つ。

「今さら後悔しても、もう遅いわ」
二度目はない 動じず咲く

二度目はない 動じず咲く

164k 閲覧数 · 完結 · Gloria Fox
結婚式の一ヶ月前、私は一年かけて自らの手で縫い上げたウェディングドレスを燃やした。

婚約者は身ごもった愛人を腕に抱き寄せたままそこに立ち、私を鼻で笑っていた。「俺がいなきゃ、お前なんて何の価値もない」

私はきびすを返し、この街で最も裕福な男の扉を叩いた。「ロック氏、政略結婚にご興味はおありですか? 千億ドル相当の株式――それに加え、未来のビジネス帝国も無料でお付けいたしますわ」
跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

449.5k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
六年前、藤堂光瑠は身覚えのない一夜を過ごした。夫の薄井宴は「貞操観念が足りない」と激怒し、離婚届を突きつけて家から追い出した。
それから六年後——光瑠が子どもたちを連れて帰ってきた。その中に、幼い頃の自分にそっくりの少年の顔を見た瞬間、宴はすべてを悟る。あの夜の“よこしまな男”は、まさに自分自身だったのだ!
後悔と狂喜に押し流され、クールだった社長の仮面は剥がれ落ちた。今や彼は妻の元へ戻るため、ストーカーのようにまとわりつき、「今夜こそは……」とベッドの隙間をうかがう毎日。
しかし、彼女が他人と再婚すると知った時、宴の我慢は限界を超えた。式場に殴り込み、ガシャーン!と宴の席をめちゃくちゃに破壊し、宴の手を握りしめて歯ぎしりしながら咆哮する。「おい、俺という夫が、まだ生きているっていうのに……!」
周りの人々は仰天、「ええっ?!あの薄井さんが!?」
死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

22k 閲覧数 · 連載中 ·
前世の橘結衣は、兄たちに尽くし続けた。どんな理不尽にも耐え、健気に笑顔を向け続けた結衣を待っていたのは――お披露目パーティーでの無残な死だった。

破滅を経て死に戻った結衣は、人が変わったように冷徹になる。もう二度と、あの愚かな兄たちのために心を痛めたりはしない。

しかし、冷遇し始めた途端、兄たちの態度が一変する。

「いい加減、そんな冷たい態度を取るな」と迫る社長の長男。

「俺の誤解だったんだ……」と苦悩する医師の次男。

「頼む、やり直させてくれ!」とプライドを捨てて乞うトップスターの三男。

「俺の妹はお前だけだ!」と泣きじゃくる不良の四男。

だが、結衣の答えはひとつだけ。

「みんな、失せて」

復讐と無関心を胸に、彼女は一人の男性の手を取った。

「宮本景太。今日からあなただけが、私のたった一人の『お兄ちゃん』よ」

――しかし、彼女の本当の身分が明かされた時、今度は血縁関係のある「実の兄たち」が押しかけてきて――!?

「『唯一の兄』だと……? じゃあ、俺たちはお前の何なんだ!?」