第19章 私の死体を踏み越えて

言い終わる前に、深いグレーの服を着た中年の女が、ずかずかと室内へ入ってきた。

重久瑛介の母だった。

彼女は一目で、池川里緒の血のにじむ膝に気づき、顔色をすっと沈ませる。

「……母さん」

瑛介が呆けたように声を落とす。

母は瑛介をきつく睨みつけると、そのまま里緒の前まで歩み寄り、膝の傷を覗き込んだ。次の瞬間、瞳がぎゅっと縮む。

「どうしてこんなことになったの?!」

誰も答えない。

母はゆっくりと振り返り、瑛介の背に隠れるように縮こまっている前谷明梨へ視線を移した。

明梨はその目に射抜かれ、びくりと全身を震わせる。反射的に、さらに瑛介の背へ身を寄せた。

「聞いてるの。どうして...

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