第23章 あちこちに情を振りまいて

池川里緒は、その場で立ちすくんだ。

重久瑛介の声だった。

一晩明けた。昨夜はあれほど大騒ぎになって、義母まで巻き込んだというのに、それでも重久瑛介は前谷明梨のために、きっちり落とし前をつけに来たらしい。

どれだけ愛しているのか――そう思うと、胸の奥がちくりと痛んだ。

里緒は思わず足を止める。

「イエンはクライアントです。たしかに前谷さんのご要望には、デザインの観点から見て無理のある部分もあります。ですが、彼女はイエンの株主でもある。そういう要求をされる以上、そこには相応の考えがおありなのでしょう」

重久瑛介の声は、ひどく厳しかった。

里緒は廊下の壁にそっと寄りかかり、目を伏せる...

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