第26章 今夜は帰らないで

今年の誕生日会は、二人のために――重久の母がわざと大げさにはしなかった。親戚すら呼ばないほど、こぢんまりと。

料理は池川里緒が家政婦と一緒に作った。彼女の得意料理もいくつか並び、見た目も香りも申し分ない。けれど食事が終わるまで、里緒はほとんど箸をつけなかった。

重久の母は必死に場を温めようとしていた。池川里緒の腕がまた上がったと褒め、重久綾斗には幼稚園での出来事をねだり、さらには何とか重久瑛介の話題へ持っていって、彼にも話に入ってほしいのだと露骨に空気を作る。

だが重久瑛介は終始無言だった。俯いたまま淡々と料理を取り、たまに重久綾斗へ視線を向けるだけ。池川里緒の顔をかすめるときも、そこ...

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