第37章 俺たちは無理だ

大した無理を言われたわけでもない。重久瑛介は断らず、シャンパンのグラスを置いて、前谷明梨と並んでバルコニーへ向かった。

バルコニーは宴会場の東側にある。ドアを開けた瞬間、夜風がふわりと吹きつけてきて、ひやりとした空気に気分までしゃんとした。

空模様は上々だった。雲に遮られることなく、無数の星が静かに夜空へ散りばめられている。

前谷明梨は手すりのそばまで歩いていき、顔を上げた。

「瑛介兄さん、見て。星がこんなにたくさん」

重久瑛介は半歩後ろに立ち、同じように夜空を仰ぐ。

「覚えてる? 昔も、こうしてよくバルコニーで星を見てたよね。あの頃、私が住んでたマンションの最上階にすごく広いテ...

ログインして続きを読む