第38章 いちばん大胆なことした

その食堂は間口がやけに狭く、横向きになってようやく一人通れるほどだった。壁には色褪せた品書きが貼られ、頭上では扇風機がぎいぎいと軋みながら回っている。

池川里緒は料理をテーブルいっぱいに頼み、さらにビールを2本注文した。彼のグラスにも、自分のグラスにもなみなみと注ぎ、それを持ち上げて軽くぶつける。こぼれた泡が彼女の指先にふわりとついた。

「乾杯」

重久瑛介は、正直かなり驚いていた。

池川里緒みたいな立場の人間が、こんな目立たない食堂を知っていることにも驚いたし、まさか彼女が酒を飲めるとは思ってもいなかった。

重久瑛介も笑ってグラスを取り、池川里緒のそれにそっと合わせる。

「乾杯」...

ログインして続きを読む