第52章 まるで私の夫のようだ

池川里緒は顎を掴まれ、無理やり顔を上げさせられた。

目の前の顔がぐらぐら揺れて、少しかすむ。けれど、きつく寄った眉も、ぴんと張った顎の線も、薄暗い灯りの下でもやけに鋭いその目も……見覚えがある。しかも、ものすごく嫌な感じで。

里緒はぱちぱちと瞬きをした。酒のせいで頭は鈍いくせにふわふわ跳ねていて、ただ、この顔は格好いいなあと思う。格好いいけど、どうにも気が短そうで、顎を掴む指がちょっと痛かった。

傍にいた矢川七海は、酔いの回った頭のまま重久瑛介の沈みきった顔を見た瞬間、びくっと肩を跳ねさせた。酔いが一気に半分以上吹き飛び、舌まで絡まる。

「重久瑛介? なんであんたが……」

重久瑛介...

ログインして続きを読む