第55章 解決したくないのか

たとえ電話一本で罵られたっていい。いまみたいに、石みたいに沈んで何の音沙汰もないほうが、よほどこたえる。――まるで昨夜のすべてが、いや、彼という存在そのものが、彼女にとってはどうでもいいものだったかのように。取るに足らない、値打ちもない、と。

その理解が、重久瑛介の胸の奥でくすぶっていた火に、さらに油を注いだ。

彼は目の前の書類を、ぱんっと音を立てて閉じる。

ちょうどそのとき、コンコンと控えめなノックが響いた。

「入れ」

苛立ちを隠さない声で返すと、扉が開き、前谷明梨がファイルを抱えてにこやかに入ってきた。

「瑛介兄さん、忙しい?」

デスクの前まで寄り、ファイルをすっと差し出す...

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