第57章 カード払いそれとも現金

重久瑛介は、彼女が本当にこのまま立ち去ろうとしているのを見て、胸の奥がひゅっと冷えた。

勢いよく立ち上がり、長い腕を伸ばす。池川里緒が背を向けた、その瞬間――彼は彼女の手首をがしりと掴んだ。

「池川里緒!」

焦りが声に滲む。いや、焦りどころじゃない。

「俺は前谷明梨と寝てない! 寝てないんだ! 一度も!」

振りほどこうとしていた里緒の手が、ぴたりと止まる。ゆっくりと振り返り、信じられないものを見る目で重久瑛介を見上げた。

「……今、なんて?」

そこでようやく、瑛介は自分がどれだけ大声で怒鳴ったかに気づく。

個室の扉は開いていた。とはいえ、周りの個室はどこも閉まっているし、防音...

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