第59章 ママはもう笑えなくなった

池川里緒の顔から、ふっと笑みが消えた。

前谷明梨だ。

室内の会話が、はっきりと聞こえてくる。

重久綾斗が弾んだ声で前谷明梨に尋ねていた。

「おばさん、夏休みになったら本当にモルディブに行けるの? テレビで見たんだけど、あそこの海って真っ青で、宝石みたいなんでしょ? 砂浜も真っ白なんだよね!」

「もちろんよ、綾斗くん」

前谷明梨はやさしく答えた。

「おばさん、ちゃーんと計画してるの。いちばん青い海を見て、水上コテージに泊まって、夜はベッドに寝転んだまま星が見えるのよ。昼間はシュノーケリングをして、色とりどりのお魚も見に行きましょうね。あ、それからね、すっごく楽しい遊びも知ってるの...

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