第十話

電話が切れた。

録音を保存して、ファイル名に日付と時刻を入力した。葵が階段の踊り場から顔をのぞかせる。「誰?」

「雪萌。」私は言った。「直播の予告をしてきた。」

窓の外、中目黒の夜は静かだった。でも私にはわかっていた——嵐が来る。


雪萌の配信は夜八時に始まった。

彼女はカメラの前での自分の見せ方を熟知していた。どの角度で涙を流せば最も哀れに見えるか、どの言葉が視聴者の同情を爆発させるか、秒単位で計算し尽くしている。

「お姉ちゃんがずっと私のことを好きじゃないのは知ってました。」開口一番、彼女の目元がうっすら赤くなった。でも涙は落ちない。ただ睫毛の上に揺れている——今に...

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