第一百零四話

東雲法務部の旧書庫は地下二階にあった。

桐生慎吾は鉄扉の前に立ち、鍵を手に持ったまま、いつもより重い表情をしていた。蓮はその後ろに立ち、スーツのジャケットのボタンを外したまま、両手をズボンのポケットに入れていた。

「会長、」桐生が言った。「土屋先生の遺言には、この封筒は『東雲家にまだ良心のある者』が自ら開封するよう明記されております。」

蓮は何も言わなかった。

鍵を受け取り、扉を押し開けた。


書庫の照明は古い蛍光灯で、点灯するまでに数秒かかった。蓮はその場に立ったまま待ち、蛍光管がジーッと唸る音を聞いた。それから白い光が一列ずつ広がり、灰色の鉄製ロッカーが並ぶ光景を照ら...

ログインして続きを読む