第十一話

「先生方が処置中です。朝霧さん、」柏木先生の声が低くなった。「蒼太くんは倒れる前、ずっとお母さんを呼んでいたんです。」

電話が手から滑り落ちた。

窓の外の空が白み始めていた。中目黒の朝は静かで、遠くを走る電車が時折、低いうなりを残して過ぎていくだけだった。でも、何も聞こえなかった。聞こえるのは自分の心臓の音だけ——壊れた機械みたいに、胸の中で狂ったように脈打っている。

蒼太。私の蒼太。

順天堂病院。

救急の入口に駆けつけたとき、東雲蓮はすでにそこに立っていた。黒いコートを羽織り、ネクタイもしていない。その顔は、嵐の前の空のように暗く沈んでいた。私を見ると、一瞬足を止め、それから...

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