第一百一十話

写真はモノクロで、端がもう黄ばんでいた。

レイヴンはそれをテーブルに置いたまま、何も言わなかった。ただ指先で角を押さえていた。まるで飛んでいってしまうのを恐れているみたいに。

私はしばらく見つめていた。写真の中の男は、ある授賞式の壇上の横に立っていた。スーツはきちんと着こなされていて、口元にはカメラに収められた、ちょうどいい加減の微笑みを浮かべていた。信頼できる年長者のように見えた。業界の礎を築いた人物のように。疑う気すら起きない人間のように。

「桂木光宗。」レイヴンが口を開いた。声は静かだった。「三十年前、彼はまだKとは呼ばれていなかった。」

葵がまとめた記事をテーブルに広げ、写...

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