第一百一十三話

佐伯弁護士の申請は、早朝六時に提出された。

彼女からメッセージが届いたとき、私は元麻布のキッチンに座って、半分冷めたコーヒーを両手で包みながら、まだ明けきらない空を眺めていた。

「家事裁判所が受理しました。緊急後見権審査、早ければ今日の午後に回答があります」

私はスマホを画面を下にして、テーブルに置いた。

心臓の鼓動は落ち着いていた。自分らしくないほど、落ち着いていた。

凛人が廊下から入ってきて、一度私を見てから、何も言わずにコンロへ向かい、牛乳を温め直した。カップを私の前に置いて、向かいに座り、何度読んだかわからない療養院の転院記録を広げた。

「彼女は今、港区のクリニックにいる...

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