第一百一十五話

朝倉美鈴のアトリエは代官山の細い路地にあって、入口には手書きの木の看板が掛かっていた。文字は彼女自身が書いたものだった。

路地は静かだった。十一月の梧桐の葉はもうほとんど落ちて、石畳の隙間に数枚だけ残り、色は黒ずんでいた。

桂木光宗の車が路地の入口に停まった。

運転手が先に降りたが、桂木はすぐには動かなかった。後部座席でしばらくその看板を眺め、それからネクタイを直して、ドアを開け、一人で中へ入っていった。

アトリエの前室には未完成の金属模型がいくつか置かれ、棚には工具が一列に整然と並び、どれも磨き込まれて光っていた。桂木はひと通り目を走らせたが、何も言わなかった。ゆっくりと飾り棚の...

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