第一百一十八話

みんなが帰ったあと、部屋には私たちふたりだけが残された。

窓の外で街灯が灯っていた。光がブラインドの隙間から差し込んで、畳の上に細い縞をいくつも落としていた。

美鈴先生はすぐには口を開かなかった。

両手を膝の上に置いたまま、何かを整理するように座っていた。言葉ではなく、もっと深いところにあるもの——三十年分の重さを。

私は急かさなかった。

ただ向かいに座って、待っていた。

凛人は私の半歩後ろに立ったまま、やはり何も言わなかった。彼の存在は壁のようだった。遮るのではなく、支えるための壁。そこにいるのが、わかった。

「星音さん。」

美鈴先生がようやく口を開いた。声は低く、何かを起...

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