第一百二十四話

通知書は佐伯から届いた。

朝九時十七分、一通のLINEメッセージ。本文はたった一行だった。「裁判所が受理しました。桂木光宗が澪さんに対し、親子関係確認の訴えを提起しました。」

私はスマートフォンの画面を、桌の上に伏せた。

アトリエにはまだ誰もいなかった。表参道の朝はいつも通りで——路面は濡れていた。前日に細雨が降り、街路樹の葉がまだ雫を垂らしていた。私はそこに座ったまま、動かなかった。

親子関係確認の訴え。

手続き上、澪は出廷して鑑定に協力しなければならない。

あの一行の裏に何があるか、私にはわかっていた。訴訟ではない。罠だ。桂木はこの裁判に勝つ必要などない。ただ合法的な口実を一...

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