第一百三十七話

開廷の日、東京には薄い冬霧が降りていた。

雨ではない。空気の中に漂ったまま、落ちることも晴れることもない水気が、霞が関一帯の建物の輪郭をぼんやりと滲ませていた。私は東京地方裁判所の石段の下に立ち、向かいに一列に並んでカメラを構える記者たちを眺めながら、胸の中に奇妙な静けさだけを感じていた。

三十年。

その言葉は、ずいぶん長い間、頭の中をぐるぐると回り続けた。回り続けるうちに、もう重さを失っていた。

佐伯が石段を下りてきた。ファイルを脇に抱え、コートの襟が風にめくれ上がっている。彼女は向かいのカメラの列を一瞥し、何も言わず、私の隣に立って、ファイルをさらに強く抱きしめた。

黒崎がそ...

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