第十四話

凛人が言った「いつか」は、翌日のことだった。

午前十時、順天堂病院。入口の桜が数本咲きはじめ、薄紅色の花びらが石段に降り積もり、行き交う靴底に踏まれて淡い赤茶の染みへと変わっていた。入院棟の前に立ち、私はコートのジッパーを喉元まで引き上げた。三月の東京の風はまだ刃のように冷たく、頬に当たるたびに細かい砂を擦りつけてくるようだった。

そして、彼が目に入った。

蒼太だった。

入院棟のガラス扉の内側に立ち、薄いTシャツ一枚で、手にソフトクリームを持っていた。耳が赤く染まり、ピンク色のアイスを口にくわえながら、目が細い三日月になるほど笑っていた。私に向けた笑顔ではない。隣に立つ雪萌に向けた...

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