第一百四十四話

澪が証人席に歩み入ったとき、私は息をしていなかった。

堪えていたのではない。本当に、忘れていたのだ。

薄いグレーのニットを着て、髪はきちんと整えられ、顔には化粧ひとつない。家にいるときとは違う歩き方だった——誰かに支えられながら、おそるおそる進むあの歩き方ではなく、ゆっくりだけれど、まっすぐな歩き方。

澪は証人席に座り、両手をテーブルの上に置いて、一度だけ裁判官を見上げてから、静かに待った。

こんな表情の彼女を、私は見たことがなかった。

宣誓が終わると、佐伯が立ち上がった。その声はいつもどおり、落ち着いていた。

「桂木光宗との関係、およびスイスでの生活について、法廷にお話しくだ...

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