第一百五十六話

布包みが作業台の上に落ちた。

かすかな音がした。

私はすぐには開けなかった。

ただ、瀬名湊の手を見ていた。彼が布包みをこちらへ押し出した瞬間、その手はまだわずかに震えていた。恐怖ではない——彼の目の中にあるのは恐怖ではなく、長い間抱えてきた重さをようやく手放したあとの、あの疲労感だった。

私は布包みを手に取り、ゆっくりと紐を解いた。

中から一冊のノートが出てきた。

表紙は古く、くすんだ米色で、紙の端がわずかにめくれていた。中央に鉛筆で二文字が書かれていた。その筆跡を、私は知っていた。

『未名』。

私の手が止まった。

隣にいるレイヴンは何も言わなかった。凛人も何も言わなかった...

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