第一百六十九話

その日、私たちはどこのレストランも予約しなかった。

凛人が「家でやろう」と言った。私は「いいわ」と答えた。

ただそれだけのこと。

でも夕方になって、キッチンから出汁の香りが漂ってきて、日向がつま先立ちで鍋の中を覗き込み、蒼太が料理台の端に座って真面目に枝豆の皮を剥いているのを見た時——私はキッチンの入り口に立ったまま、どこに立てばいいのか分からなくなった。見知らぬ場所だからじゃない。あまりにも馴染みすぎていて、少し戸惑ってしまったのだ。

澪は窓際の椅子に座って、膝の上にエプロンを乗せて、ナプキンを折るのを手伝ってくれていた。彼女はとてもゆっくりと、一枚一枚をきちんと四角く折っていた。ま...

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