第一百七十話

日向はランドセルを肩に担ぎ上げ、振り返って私に手を振った。その動作は、まるで交通整理でもしているかのように大きかった。

「ママ、行ってきます!」

「気をつけてね。」

私は玄関に立って、彼が駆け出すのを見送った。路地へ、朝の金色の光の中へ、黄色いランドセルがどんどん小さくなって、角を曲がって、消えた。

あの子は、今こうなった。

深夜二時に泣きながら「ママ、いなくならないよね」と聞いてきた子と、同じ子だとは思えないくらい、明るくなった。

胸の中に込み上げてくるのは誇らしさではなく、もっとゆっくりした、もっと深いものだった。傷ついた木が、また新しい葉を出したのを見るような、そんな感覚。

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