第一百七十三話

凛人が「明後日」と言ったとき、私はワークスペースの机に散らばった草稿を片付けていた。

すぐには答えなかった。

彼が何を計画しているのか、もうずっと前からわかっていたから。深夜にそっと玄関を出る足音、声を潜めた電話、黒崎と視線を交わすときの口元に浮かんだ一瞬の弧——気づいていなかったわけじゃない。

ただ、気づかないふりをしていた。

ある種の期待は、完全なかたちのまま待つ価値がある。

だからあの朝、蓮からのメッセージがスマホの画面に表示されたとき——「代官山、午後二時、直接渡したいものがある」——私は折り返して、弁護士を連れてくるのかどうか訊いた。

「いらない」と彼は言った。

一秒...

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