第二十五話

恐怖ではなかった。怒りでもなかった。憎しみですらなかった。

とっくに自分とは無関係になった、他人を見る目だった。

蓮はグラスにウイスキーを注ぎ、半分飲んで、残りを瓶に戻した。

右手をデスクに平らに置いて、力を込めて押しつけた。

胸の奥から這い出そうとする何かを、押し戻すように。

その瞬間、彼は気づいた。

七年。なのに、何一つ思い出せない。

彼女が寒がりかどうか。何が好きか。笑ったときの声がどんなだったか。全部知らない。

自分が覚えているのは、今日のあの平手打ちだけだ。

七年の記憶の中で、あの一つだけが、鮮明に刻まれている。

——本当に、滑稽だ。


【並行叙事:神...

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