第三十話

午前十時十七分、スマートフォンがドローイングボードの上で一度だけ震えた。

電話ではない。プッシュ通知だ。IDC国際ジュエリーデザイン大賞の公式アカウントから。

ペン先が宙に止まる。一滴の墨が紙の上に滲んで広がり、ふいに落ちた星のように紙面に沈んだ。すぐにスマートフォンを手に取ることはしなかった。先にその墨の染みに一筆加えて、流れ星の形に整える。失敗は修正できる――慌てなければ。

葵がパソコンの向こうから顔を出す。モニターの光が彼女の顔を青白く染めていた。「出た?」

「たぶん」

通知を開く。文字数は少ない。けれどその一語一語が、石に刻まれる鑿のように重かった。

「専門家委員会と警...

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