第三十一話

雪萌の睫毛が、かすかに震えた。

「それは東雲グループの核心機密——」

「だから手に入れるんだ」片桐が遮った。「それがお前の唯一の価値だ、雪萌。失望させるなよ」

雪萌は封筒を手に取った。軽かった。中には一枚の紙しか入っていないようだった。封筒をコートのポケットに押し込み、踵を返してドアへと向かう。

「片桐さん」彼女はドアの前で立ち止まり、振り返らなかった。「もし必要なものを手に入れたら、守ってくれますか?」

「もちろん」片桐は微笑んだ。

エレベーターのドアが背後で閉まり、彼女の不安ごと、閉じ込めた。

深夜、私は神崎家の南向きの部屋でデザインの原稿を整理していた。窓の外には深い藍色の夜空が広...

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