第五十話

電話が鳴ったのは、会議室の午後の光が最後の名残を引いていく時間だった。

琥珀色がゆっくりと壁から温もりを奪い去り、長い一日をさらに長く感じさせるような灰色だけが残った。私はペンを置き、二度目のコール音で電話に出た。

「三回目の調停の日程が決まりました」と佐伯が言った。前置きなし、開口一番。感情の色をいっさい乗せずに複雑な知らせを伝えることを身につけた人間特有の、職業的な落ち着きのある声だった。「東雲が今朝、新しい和解案を提出しました。離婚に同意。財産分与の譲歩、面会交流権の確認、資産引き渡しの枠組みも明示されています」わずかな間、正確で短い。「条件は共同声明です。円満な別れという認識を...

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