第五十四話

仮病が暴露されてから三日目、神崎家のインターフォンが鳴った。

私はリビングで記者会見用の発言原稿を整理していた。日向は絨毯の上に腹ばいになって絵を描いていた。クレヨンが紙の上でさらさらと音を立て、歪んだ猫の絵が生まれていく。猫の胸には小さなバッジが付いていて、そこに二文字が書かれていた——「勇気」。

インターフォンがもう一度鳴った。葵が玄関へ向かい、やがて彼女の声が聞こえてきた。それはこれまで一度も聞いたことのない、冷え切った警戒の色を帯びていた。

「星音。お客さんよ。」

私は玄関へ歩いた。

扉の前に二人の人物が立っていた。男と女、六十代、仕立ての良いが時代遅れの高級スーツに身を...

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