第五十七話

午前十時、湾岸の倉庫区。

私はUSBメモリを手に、たった一人で二号倉庫へと踏み込んだ。凛人、黒崎、佐伯は五百メートル先の指揮車の中にいる——襟元に貼りつけた録音器が素肌に冷たく触れていて、まるで凛人がそこに一本の指を残していったかのようだった。

倉庫区はかつての物流港の廃墟だった。コンクリートの床には亀裂が走り、砕けた高窓から海風が吹き込んで、潮と錆の混じった匂いを運んでくる。石上啓は手下を二人連れて倉庫の中央に立っており、葵が内側から連れ出されてきた——両手はまだ縛られたままだったが、意識はあった。左頬の青あざは、あの小屋でちらりと見たときよりもずっと深く滲んでいた。

彼女は私...

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