第七十一話

梅雨の雨は激しく、まるで空に穴が開いたようだった。私は神崎家のリビングで母のスケッチブックを整理していた。そのとき、スマホが鳴った。

梅おばさんだった。声が張り詰めていた。まるで弦を限界まで引き絞ったような、細い声で。

「奥様、坊ちゃまが高熱です。三十九度八。新しい処方で薬を減らしてから最初の免疫反応で、先生は想定内とおっしゃっていますが……でも、体温がどんどん上がって」

私は上着をつかんで、ドアを飛び出した。

凛人が階段を駆け下りてきた。「星音!」

「蒼太が熱を出した」と私は言った。「梅おばさん一人で。莲は?」

「出張。大阪」

「私が行く」

「送る」

「いい」私はすでにド...

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