第七十七話

オークションの内覧会前日、美鈴から電話が入った。

「星音」彼女の声は電話越しに届いた。ぴんと張り詰めた弦のような声だった。「私のアトリエに来て。あなたに会わせたい人がいる」

「誰ですか?」

「あなたの場を締められる人よ」


美鈴のアトリエ、午後三時。

私は窓際のソファに座り、宝飾年鑑のページに指を滑らせていた。凛人は隣でスマートフォンのメールを確認している。扉が開いた。

美鈴が先に入ってきた。その後ろに、一人の男性が続く。

六十歳前後だろうか。白髪交じりの髪は、一分の乱れもなく整えられていた。濃いグレーのスーツ。ネクタイはなく、第一ボタンを外している。その目は鋭く光っ...

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