第九十一話

アドリアン・リーブスから再び呼び出されたのは、ジュエリー展が終わって一週間後のことだった。

場所は港区のペニンシュラホテル。最上階のスイートルーム、フロアから天井まで届く窓の向こうには東京湾が広がっていて、海面には貨物船がゆっくりと進んでいた。夜の闇の中で、まるで疲れ果てた獣の群れのように。

彼は一人掛けのソファに腰かけ、テーブルには二杯のコーヒーが置かれていた。すっかり冷めて、表面に薄い膜が張っていた。

「朝霧さん」と彼は言った。挨拶もなしに。「先日ご提案したコラボレーションシリーズについて、ご検討いただけましたか」

「検討しません」と私は答えた。「清原澪の名前は、売り物じゃない」

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