第九十九話

十二月の第一週、記念展が開幕した。

会場は銀座の古いビルの三階。八十人しか収容できない小さなスペースだったけれど、隅々まで、私が自分の手で整えた場所だった。

母のデッサン帳は、ガラスケースの中に広げて置いた。彼女のイヤリング、彼女の写真、そして十九歳のときに彼女がデザインした六芒星のブローチ——Ravenが「このブローチには魂が宿っている」と言った、あの一点。

入口には、当帰の鉢を置いた。飾りじゃない。薬草の香りだ。七年間、毎朝午前四時に嗅ぎ続けた、あの匂い。


午前十時、来場者が入り始めた。

晋作と美鈴が最前列に座った。Ravenは二列目に腰を下ろし、隣に保温ボトルを置...

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