第1章
アイリス視点
鎖が手首に食い込んでいた。
ここに来て、三ヶ月目の地獄。
地下室では、十二台の壊れたテレビが一斉にブーンと唸りを上げている。ESPN、FOXスポーツ、NBCスポーツのアナウンサーの声が混ざり合い、ただの騒音になっていた。
隅の倉庫部屋からは、腐った食べ物の悪臭が漂ってくる。そこは私の「お仕置き部屋」だった。
「おい、よく聞け、この化け物」父のジミーが電気ショック棒を握りしめる。青い電気がバチバチと火花を散らした。「今夜は三試合だ。全部当てろ。さもなきゃ、またこいつを味わわせてやる」
私は凍えるように冷たい椅子の上で縮こまった。六歳の体は恐怖で激しく震えている。試合の結果を予知できるってわかってから、この地下室は私の地獄になった。
「が、頑張ります、お父さん。いい子にするって約束するから」私の声はかろうじて聞き取れるくらい小さかった。
「頑張る?」彼は鼻で笑った。「頑張るんじゃねえ、このクソガキが! 当てるんだよ、絶対に! ミラー家の人間は代々このギフトを受け継いできた。お前が俺に恥をかかせることだけは絶対に許さねえ!」
母のリンダはソファにだらしなく寝そべり、画面に点滅する賭けのオッズを食い入るように見つめていた。「ねえ、アイリス。お母さんがチーズバーガー買ってあげたわよ。冷蔵庫に入ってるから。今夜いい子にできたら、それをあげてもいいわ」
チーズバーガー。空腹で胃が痛いほど締め付けられる。昨日は一日中、濁った水道水を一杯しかもらえなかった。
「ヴィクトルが俺からの電話を待ってる」父は携帯を振った。「一万ドル賭けてんだ。しくじるんじゃねえぞ、さもないと……」
彼は最後まで言わなかったが、その先に何が待っているかはわかっていた。
最初の試合が始まった。ニックス対ブルズ。
私は目を固く閉じ、必死に集中しようとした。ぼんやりとした映像が心の中に浮かび始める……終盤、ニックスが立て続けにターンオーバーを犯し……ブルズが逆襲する……。
「ブルズの勝ち。101対97」
父はすぐさま電話をかけた。「ヴィクトルさん、ジミーです。最初の試合、ブルズが四点差で勝ちます。全額そっちに張ってください」
お願い神様、当たっていますように……
地獄のような四十分後、最終スコアが画面に映し出された。ブルズ104、ニックス99。
外れた。
いや……お願い、やめて……
「この役立たずのゴミが!」
「待って、お父さん! 次はちゃん――」
電気ショック棒が私の左腕に叩きつけられた。
「ああああああ――っ! お父さん、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」肉を引き裂くような電気の痛みに、私は絶叫した。体がバラバラにされるかのように痙攣する。
「ジミー、やめて!」母がすぐに焦ったように叫んだ。「完全に壊さないで。まだあと二試合あるのよ」
私の痛みを心配してるんじゃない。自分のお金を心配してるんだ。
私は椅子に崩れ落ち、涙と鼻水がごちゃ混ぜになった。
どうして……どうして私にこんな呪われた能力があるの?
二試合目は野球。ヤンキース対レッドソックス。
「もう一度チャンスをやる」父は電気ショック棒を置いたが、今度は母が小さなナイフを手に取った。「もう一度しくじったら……」
その刃を見て、私の全身が震えた。
集中して……集中しなきゃ……またお仕置きされちゃう……
再び心の中に映像が閃く。七回、ヤンキースが爆発的な攻撃を見せ、三連続ホームラン……。
「ヤンキースの勝ち。7対4」
「さすが俺の賢い娘だ!」父の目が輝いた。「ヴィクトルさん、二試合目はヤンキースが三点差で勝ちます!」
試合は激しく展開した。七回、ヤンキースは確かに猛攻を始めた。だが九回、レッドソックスが突如として連続得点を挙げた。
最終スコアが確定する。レッドソックス8、ヤンキース6。
また外れた。完全に。
「いやいやいや! お母さん、本当に頑張ったの!」涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。「もう間違えたくないよ!」
「アイリス」母は私の前にひざまずき、優しい声で言った。「お母さんはあなたのこと愛してるわ。でも、この教訓は覚えておかないとね」
「お母さんやめて、次はちゃんと当てるから! お願い、信じて!」
ナイフの先端が私の右腕に突き刺さる。冷たい金属が皮膚を切り裂き、血がすぐに噴き出した。彼女は私の腕に一画一画、刻みつけていく。ヤンキース 7:4。
「あああああ――っ! お母さんやめて! 痛すぎる! もう耐えられない!」私の悲鳴が地下室に響き渡った。
「この痛みを覚えなさい。そうすれば次は忘れないから」彼女の声は優しいままだった。「痛みこそが最高の教師よ」
血が床に滴り落ち、どす黒い染みを作っていく。
私は必死に唇を噛みしめ、悲鳴をこらえた。叫べば叫ぶほど、拷問は長引くのだ。
「最後の試合だ」父が再び電気ショック棒を手に取った。「レイカーズ対ウォリアーズ。もしまた間違えたら……」
彼は最後まで言わなかったが、次に何が来るかはわかっていた。もう間違えるわけにはいかない。
集中……集中……ありったけの力で……
今度こそ、心の中の映像は水晶のように鮮明だった。レブロンの土壇場でのスリーポイントシュート、最後の最後でのカリーの致命的なミス、残り三十秒からのレイカーズの驚異的な逆転劇……。
「レイカーズの勝ち」私は目を開け、残されたすべての力で二人を見つめた。「112対108。残り三十秒で七連続得点する」
父は一瞬ためらった。「絶対に確かか?」
「確かよ」私は歯を食いしばった。「最後の最後でレイカーズが逆転する。命を賭けてもいい」
「ヴィクトルさん、三試合目、レイカーズが四点差になります。有り金全部です!」
二時間半の、地獄のような待ち時間。
レイカーズが終盤に猛烈な追い上げを見せ、レブロンが立て続けにスリーを決める。
最終スコア。レイカーズ112、ウォリアーズ108。
父と母は顔を見合わせ、そして二人同時に狂ったような笑い声を上げた。
「天才だ! 俺の金のなる木だ!」父は私を強く抱きしめた。私の腕からまだ血が流れている傷のことなど、すっかり忘れている。「さすがだ! ミラー家の血は裏切らねえ!」
「アイリス、お母さんが今すぐチーズバーガーを温めてあげる!」母は興奮して手を叩いた。「今夜は上の階のちゃんとしたベッドで寝ていいわよ!」
彼らはまるでクリスマスみたいに踊り狂い、自分たちがさっきしたことなど完全に忘れていた。まるで、その血まみれの傷が存在しないかのように。
私は腕に刻まれた文字を見下ろした。血がまだゆっくりと滲み出ている。
『ヤンキース 7:4』――ただの間違ったスコアじゃない。これは、私の悪夢の始まり。
「君のおかげでお母さんとお父さんは大金持ちになれるのよ!」二人の声が、奈落の悪魔のように地下室に響く。
「あなたはうちの可愛い金のなる木なんだから、アイリス!」母は私の額にキスをした。「明日はもっと大きな試合があるのよ!」
もっと大きな賭け。もっと大きな痛み。
私は苦痛に目を閉じた。涙が頬を伝って流れ落ちる。
お願い、誰か私を助けて……?
