チャプター 104

私たちは数分間、黙って座って星を眺めていた。彼の存在が近すぎて、意識が散漫になる。先ほどのスイムで肌に残った潮の香りと、彼のコロンが混じり合った匂いがした。

「あれは何?」特に明るい星を指さして、私は尋ねた。

アレクサンダーは私の指差す先を追った。「あれはヴィーナスだよ。実は惑星で、星じゃないんだ」

「愛の女神……」私は思わず呟いた。

「そして美の女神でもある」彼の声が低くなる。「今夜にふさわしい」

振り返ると、彼の視線は空ではなく、私に向けられていた。薄暗がりの中、その瞳は暗く、強い意志を宿している。彼の視線が私の唇に落ちた瞬間、息が喉に詰まった。

「アレックス……」何を言おうとしたのか、自...

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