第十一章

「夫を満足させる、とかな」

彼の手が滑り落ちてきて、私のお尻を鷲掴みにする。思わず短い悲鳴が漏れた。

「私の取り柄って、それだけ?」口元が綻びそうになるのをこらえながら、わざと怒ったような声で訊ねた。

「とんでもない」不意に声のトーンが和らぐ。「君は仕事がずば抜けて優秀だ」

不意打ちの褒め言葉に、虚を突かれた。「……あ。ありがとう」

気まずい沈黙が二人の間に落ちる。それを破ったのは、遠くから聞こえるヘリコプターのプロペラの音だけだった。

「迎えが来たようだ」アレクサンダーが立ち上がり、私に手を差し伸べながら言った。

屋敷へ戻るフライトは静かだった。二人とも、それぞれの物思いに耽っていた。ヘリ...

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