第145章

人混みの中、ジェームズが近づいてくるのが見えた。いつもの自信に満ちた不敵な笑みを、その口元にしっかりと浮かべている。バスキアのスケッチを競り落としたことを自慢しに来たに違いない。

「アレクサンダー」と、彼はシャンパングラスを片手に手慣れた様子で声をかけてきた。「なかなかいい夜だね。もっとも、君が入札合戦に負けるのを見るのは珍しいが」

私は無理に気持ちのいい笑みを作り、手を差し出した。「ジェームズ。スケッチ、おめでとう。よほど欲しかったようだね」

「君ほどではなかったみたいだがね」彼の目は満足感に輝いていた。「七十万が君の限界だったようだ」

「我々の違いはだな、ジェームズ、私がいつ価値に見合わな...

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