第176章

アレクサンダー

オフィスへの帰路は、行きよりも早かったが、俺の心はその間ずっと落ち着かなかった。ハドソン・ディベロップメントとの契約はほぼ手中に収めたも同然だというのに、満足感よりもむしろ、どうにも気が散っている自分がいた。

「カーターさん、到着しました」と、車がカーター・エンタープライズの前で停まるとジェシカが言った。

「ありがとう」俺はネクタイを締め直す。「法務部に書類を準備させて、明朝発送する前に俺が確認できるよう送るよう伝えてくれ」

「すでに手配済みです。三十分後に経営陣との予算会議がございます」

俺は頷いた。「出席する」

ロビーを歩いていると、社員たちが敬意を込めて頷いてくる。カー...

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