チャプター 197

アレクサンダーは少し黙っていたが、やがて思慮深い声で口を開いた。「どんな遺産を残したい?」

その問いに不意を突かれた。「さあ……。そういうふうに考えたことはなかったわ」

「今、考えてみて」

私は彩飾写本に目を向けたまま、彼の問いについて考えた。「意味のあるもの、かしら。人の助けになるとか、世界をほんの少しでも良くするとか、そういう何か」

「見事なくらい曖昧だな」

軽く肘で彼をつついた。「あなたはどうなの? あなたの遺産は何になるの? カーター・エンタープライズを新しい市場に拡大させること?」

「それは祖父の遺産だ。俺のじゃない」彼は一拍置いた。「俺が残すものが何になるかは、まだ模索中だ」

その...

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