第三26章

オリヴィア

ロブスターにナイフを入れる。身はやわらかく、味付けも申し分ない。「これじゃ、普通の暮らしに戻れなくなるわ」

「普通の暮らしって?」

「ほら、よくあるレストランとか。車で寄って買うコーヒーとか。食料品の買い出しとか」

アレクサンダーが笑った。「最後に買い出しに行ったの、いつ?」

「たしかに」私は屋敷に移ってから、食料品店に足を踏み入れていない。「でも昔は行ってたのよ。普通の人だった頃はね」

「今だって普通の人だ」

「そう?」私はこの優雅な船室を見回して肩をすくめた。「普通の人は、個人所有のヨットでシャンパン・クルーズなんてしないわ」

「そもそも“普通”なんて、たいして価値がない」

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