チャプター 53

彼はコンソール越しに身を乗り出し、その顔が私の目と鼻の先にあった。心臓が止まるかと思う一瞬、キスされるのかと思った。でもそうではなく、彼は前日と同じように、私の額に唇をそっと触れさせた。

「ゆっくり休んで」と彼は囁いた。「朝、また会おう」

彼がこんなに近くにいて、私は言葉も出せずに頷くだけだった。スパイシーで高価そうな彼のコロンの香りが私を包み込み、頭がくらくらした。

「おやすみ、アレックス」と、私はようやくそれだけ言って、ドアハンドルに手を伸ばした。

「おやすみ、リヴ」

その言葉通り、アレクサンダーは翌朝きっかり七時半に私の部屋のドアの前に現れた。コーヒーと、私のお気に入りのパン屋さんの袋...

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