チャプター 57

私たちはパーティーのメイン会場をそっと抜け出し、ヨットの船尾へと向かった。アレクサンダーが乗組員の一人に頷くと、その人は私たちのためにドアを開けてくれた。そこには専用の階段があった。

「こんなところに入っていいんですか?」私は不安げに尋ねた。

「事前に手配しておいたんだ」アレクサンダーは私を安心させるように言った。「信じて」

階段を上ると、ヨットの最後尾にある人目につかないデッキに出た。そこにはクッションとブランケットが置かれた居心地の良さそうなラウンジエリアがあるだけで、他には誰もいない。空間を照らしているのは、連なるフェアリーライトと、暗い水面に反射する頭上の月明かりだけだった。

「ここは...

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