チャプター 58

オリヴィア

彼がエレベーターへと戻っていくのを見届けてから、私は自分のアパートの部屋に入った。ドアを閉めると、自分が馬鹿みたいに笑っていることに気づく。今夜はいろんな意味で予想外だったけれど、アレクサンダーと一緒にいるのがこんなにも楽しいなんて、それがいちばんの驚きだった。

これは危険な領域だ。私たちの関係は実務的で、ビジネスライクなものであるはずだった。でも、あのプライベートデッキで私を見つめた彼の眼差し、ダンスの時に私を抱きしめてくれた腕……それは、何かそれ以上のもののように感じられた。

アレクサンダー・カーターは何よりもまずビジネスマンなのだと、私は自分に厳しく言い聞かせた。この結婚は...

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