チャプター 60

「すごいわね」自分でも意図したより掠れた声が出たことに、内心驚いた。

「味わうまで待つといい」アレクサンダーは私に皿を手渡し、自分のワイングラスを掴んだ。「外で食べよう」

彼についてデッキへ出ると、そこには海を見下ろすテーブルが用意されていた。月が海面に銀色の道を落とし、岩に打ち寄せる波の音が、心地よいBGMのようだった。

テーブルを挟んで向かい合わせに座り、私はフォークでパスタをくるくると巻きつけて一口食べた。甘いトマト、風味の強いチーズ、完璧なアルデンテのパスタ。口いっぱいに風味が広がる。

「うそ……」思わず吐息が漏れた。「信じられないくらい美味しい」

アレクサンダーの瞳の色がわずかに深く...

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